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2020年12月26日

東京都「新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」誕生の軌跡と今後の展開

東京都「新型コロナウィルス感染症 支援情報ナビ」 https://covid19.supportnavi.metro.tokyo.lg.jp/

新型コロナウイルス感染症拡大、政府の緊急事態宣言等を受け、東京都でも都民や都内事業者が利用できるさまざまな支援情報を打ち出しましたが、支援は多岐にわたるため、どんな支援が受けられるのかわからない…という声も。

それに応え、東京都が開設したのが「新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」。

一日も早い都民生活の安定と経済活動の確保のために誕生した支援情報ナビの活用法と、支援情報ナビにかける想いを東京都政策企画局・府馬様にお聞きしました。

(インタビュー:百田なつき、撮影:小林孝至)

東京都 政策企画局 政策調整部 政策調整担当課長 府馬一貴様
東京都 政策企画局 政策調整部 政策調整担当課長 府馬一貴様

必要な支援情報を、必要な方に、迅速に!

Q「新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」とは?

府馬様:「新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」は、都民の皆様が受けられる支援情報をわかりやすく迅速にお伝えするサイトです。コンセプトは、必要な方に必要な情報を届けるということ。いくつかの質問に答えるだけで、生活に困っている方、事業の継続に困っている方はもちろん、すべての都民の皆様がどんな支援を受けられるのかわかるというのが、このサイトの特徴ですね。

Q 具体的にどのような使い方がおすすめですか?

府馬様:「自分に合った制度を探す」では基本3つの質問に答えるだけで、受けられる支援制度に行き着くようになっているのでパソコンでの操作が苦手な方でも簡単に確認できます。「テーマ別に制度を見る」ではもらう、借りる、相談などアクションごとに検索することができますので、ご自分のニーズに合わせて支援情報を探すことができます。

「企業・個人事業主向け」「個人向け」「医療関係者向け」に、自分が受けられる支援情報を探せます。

たった2週間でスピード立ち上げ

Q このサイトを立ち上げたキッカケは?

府馬様:4月7日、7都府県を対象に国が出した緊急事態宣言を受け、東京都も4月10日(金)の小池知事の会見で、都民の皆様への外出自粛や、施設利用制限、事業者様に催し物を控えてほしいなど、お願いをしました。

この要請により、都民生活、事業者さんの行動に制限がかかることになります。そうなると何かしらの支援を必要とする人や事業者様も出てきます。それで週末に、まず、今、都で何ができるか、どんな下支えができるのかを整理して、早急にアナウンスしていこうという話になりました。

週明けに都のすべての局に声をかけ、都民のため事業者様のために何かできる支援策があったら全部出してもらい、14日(火)にはそれをまとめて、政策企画局のホームページで個人向けと事業者向けの支援策を公開しました。

スピーディに対応できたのは良かったのですが、その時は、時間を優先したので「詳しくはWebページへ」という簡単なものでした。ただ、行政サービスは一般の人から見ると「言葉が難しい」「制度名がわかりづらい」こともあり、「どんな支援なのか?」「対象者は誰なのか?」伝わりにくく、もっと利用者目線が必要だと感じていました。

また、国からの支援情報、都からの支援情報、区市町村からの支援情報と、情報が膨大にありまして、支援策はたくさんあるのに、自分が対象になる支援制度がわからないという状態になると危惧し、それで、もっと「伝わる」形に変えなければ…という想いがありました。

Q そこでこの支援情報ナビに着手されたわけですね?

府馬様:そうです。災害支援の情報を発信していくことは、過去にさまざまな災害を経験してきたこともあり、行政にもある程度、知見が積み重ねられてきていますが、感染症についてこんなに大きく動くのは初めてのことだったので、当初は本当に大変でした。さらにできるだけ早く立ち上げることに意味があると感じていたので、当時の感染状況や動向を考えると、5月6日以降も緊急事態宣言が延長される可能性もあると想定して、ゴールデンウイーク前にはサイトを立ち上げたいと思いました。

すでにあるデータベースを活用できたのがスピード立ち上げの秘訣

Q 短期間で立ち上げることができた理由は?

府馬様:とにかく必要な方に早く届けるために、ゴールデンウィーク前までにリリースしたいと思い、都庁内だけでなく民間の事業者さんに力を借りようと、利用者目線で支援サービスのデータベースを構築しているアスコエパートナーズさんの協力を得ることにしました。

行政はどうしても部署ごとで物事を考えがちで、利用者の目線に立った「もらう」「借りる」「話す」「聞く」「相談する」というアクション軸で情報を整理するのが難しい。そこはノウハウとデータベースを持っているアスコエさんにサポートしてもらいました。また、懸念事項だった制度をわかりやすくリライトしてくれたのも、大変助かりましたし、スピードアップにも繋がりました。

Q 支援情報は都だけでなく、国や区などのものもありますが…。

アスコエさんには、もともと経済産業省が出している国からの支援情報「ミラサポプラス」をベースに情報をアップデートされている「ユニバーサルメニュー®」*というデータベースがあったので、それが使えるのが大きかったです。

都で国の情報を拾うのは量的にも時間的にも難しかったので、そのデータベースを使わせてもらって、国の支援情報も取り込めるサイトにすることができました。

区市町村の支援情報は支援ナビに取り込むことを考えましたが、すでにそれぞれコロナ対策サイトを立ち上げていたので、「支援情報ナビで」は、区市町村のコロナ対策サイトに繋ぐだけにしました。とにかくこのサイトは複雑になりすぎないようにすることがポイント。すべてにおいて「伝える」ではなく「伝わる」を心掛けました。

毎日、刻々と状況が変わり、まだ道筋が見えない中でしたが、時間とともに自分たちが変わっていく、変えていくしかないなという実感が庁内の全体的な雰囲気になり、スピーディに進めていけたのだと思います。

【データ連携イメージ図】

アスコエパートナーズの行政サービスカタログの実装とデータ連携に関する知見を生かし、
今回の支援情報ナビ構築にはユニバーサルメニュー®の技術を活用。

すべての都民に伝わるサイトへのこだわり

Q具体的にサイトはどのような点にこだわって作られましたか?

府馬様:10近い質問に答えさせる行政ナビゲーションもあるようですが、このサイトでは3ステップで絞り込みをさせるという、UX(利用者体験)の実現にこだわりました。行き着く回答結果が多すぎて迷う、少なすぎることがないよう、適切な結果になるように工夫しながら、質問内容も検討してきました。

また、支援情報は端的に伝わることが大切だと考えていましたので、デザインは華美にせず、シンプルに、全ての都民にわかりやすく、ストレートに発信していくデザインにしました。

同時に、アクセシビリティにも重点を置き、音声読み上げ機能が使えるよう、画像情報になるアイコンを使わず、できるだけテキストにするなど、都が定めるアクセシビリティの基準を満たすよう細かい工夫をたくさんしています。

こうした、サイトの構築あたって工夫しなければならないことがたくさんあって、それには宮坂副知事からもたくさんアドバイスをもらいしました。サイトの改善点や使い勝手などについて、副知事からダイレクトメッセージが届いて、慣れるまでは緊張しました。

質問に答えるだけで該当する制度がわかるシンプルな仕組みです。

Q 「自分に合った制度を探す」で「医療関係者向け」支援情報を切り出しているのも特徴的ですね。

府馬様:災害支援とは違い、今回の新型コロナウイルス感染症においては医療の現場が大変な状況であることはもちろん、受診控えや風評で経営が厳しい状況になる医療機関もあり、医療機関の人たちを支援していかなくてはいけないと思い、5月下旬頃にこのページをアップデートしました。

都民の声を反映してさらに使いやすく

Q ユーザー(都民)からのサイトへの要望はどのように集め、対応するのですか?

府馬様:都民の声を受け止めるために、ご意見フォームを追加しました。日々、さまざまなご意見をいただいております。例えば、新しい支援策情報が探しにくいというご意見をいただいたので新着情報のカテゴリーを追加したり、他にも、最初は支援策がいつからいつまでのものなのか載せていなかったのですが、〆切の期限を明示することにしました。書類の準備の都合や手続きのスケジュールを考えるのに期限を知りたいというお声があったからです。都民の皆様の使い勝手が命ですから、ご要望をいただくのはありがたいですね。

Q 実際に「支援情報ナビ」の都民からの評判はいかがですか?

府馬様:サイトをオープンしてから、今日まで(12月16日時点)380万PV以上の閲覧をしていただいており、手応えを感じています。サイトへの反応はGoogle Analyticsを利用し常に分析し、改善策を検討していくつもりです。

Q 他の局や自治体からの評判はいかがですか?

府馬様:庁内の評判はいいですね。「支援情報ナビ」の情報発信力を評価してくれています。新たな支援策を出す時、支援ナビに公開しておくと都民が見に来てくれるという認識は全局持っていて、毎週の情報メンテナンスに合わせて、発表できるように意識してくれています。

他の自治体さんでは、例えば区市町村さんが都の支援策を調べるの際に、今まで都の各局のサイトをそれぞれ探さないといけなかったのですが、「支援情報ナビ」があることで、ここを見たらすぐわかると。そういった面でも活用いただいているようです。

今後も予期できない変化に対応できる体制を

Q 「支援情報ナビ」の公開後の運用や更新などはどうされていますか?

府馬様:公開後の運用は都庁だけでやるのは限界があるので、アスコエさんに委託して週1回メンテナンスしています。各局から新しい情報が出てくると、政策企画局でも一度利用者目線でわかりやすいか確認して、アスコエさんに情報を渡してさらにリライトいただいています。

また忘れてならないのは、法令改正への対応です。特に、新型コロナ感染症支援制度は、都の条例だけではなく、国の法律でもどんどん変わっていくので、こうした、国の法令改正にもとづく制度情報に詳しいアスコエさんと共に取り組めることは、効率化の点からも意味が大きいですね。

Q 今後はどのようなサービスや展開をお考えですか?

府馬様:可能であればこのサイトを見にきた方がそのまま、手続きまでできるようにしたいと、今、考えています。アスコエさんとも議論していますが、どこまでできるか、今後テストしてみたいと話しています。紙ベースのものをただPDFやWordにするのではなく、オンラインで済むように手続きが簡素化される、手続きそのものをデジタル用に考えて制度設計されるように直していかないといけない。これには行政の手続きの概念を変えないと厳しそうなので、今後の大きな課題ですね。

また、観点は少し違いますが、この支援情報ナビは、掲載している支援情報をオープンデータ化するとともに、ソースコードも公開しています。前にもお話しした通り、「支援情報ナビ」はアスコエさんの独自の「ユニバーサルメニュー®」を活用して構築しているので、もちろんアスコエさんのご協力がなければ実現しなかったのですが、相談したところ、社会的責任と捉えてくださり、快く了承いただきました。

我々が思いもつかないような様々な場面で、活用してもらえると嬉しいです。


*「ユニバーサルメニュー®」とは?

アスコエパートナーズが提供するユニバーサルメニュー®(UM)は、国及び自治体等が提供する「子育て」「介護」「防災」など様々な行政サービス情報を、誰もが簡単に検索・活用できることを目指し設計されています。ユニバーサルメニュー®は、国がオープンデータの参考に示す自治体向けのタグや、概要や対象者などの項目名(語彙)用いて設計されているため、利用者が行政サービス情報を簡単に検索・活用できるWEBサイトやシステムを容易に構築できます。

*「ユニバーサルメニュー®研修」についてはこちら

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