2021年6月2日

【Society(ソサエティ)5.0】どんな社会?どう変わる?

「Society(ソサエティ)5.0」は、現実社会と仮想空間との高度な融合によって、より豊かな世界を実現しようという日本発の取り組みです。それでは「Society 5.0」とはどのような社会なのでしょうか? これまでの社会と比べて、どう変わっていくのでしょうか? そんな疑問にお答えします。

「Society(ソサエティ)5.0」とは

政府が提唱したデジタル化が進んだ未来の社会像

内閣府は、この「Society 5.0」を以下のとおり定義しています。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

内閣府ホームページ|Society 5.0

つまり、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などの技術革新が進むことによって現実世界から集積される大量の情報は、仮想空間において解析され、新たな価値として社会にフィードバックされるようになります。こうした先端的なシステムをあらゆる産業や社会システムに取り入れることで、これまで困難とされてきた経済の発展と社会的課題の解決が両立できる社会にしていこうと、政府は考えています。

「Society 5.0」は「超スマート社会」実現に向けた取り組み

「第5期科学技術基本計画」のなかで、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した社会を「超スマート社会」と名付け、以下のように定義しています。

必要なもの・サービスを、必要な⼈に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる⼈が質の⾼いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、⾔語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会

第5期科学技術基本計画

「Society 5.0」は、この「超スマート社会」の実現に向けた取り組みの総称です。そして、「Society 5.0」の強力な推進によって世界に先駆けて「スマート社会」を実現していくことで、人々に豊かさがもたらされること、持続的な成長や国際社会への貢献につながっていくことが期待されています。

「Society 5.0」は「超スマート社会」実現に向けた取り組み
超スマート社会サービスプラットフォーム/「第5期科学技術基本計画の概要」内閣府

なぜ「5.0」なのか?

内閣府は、これまで人類が歩み、進化・発展させながら形成してきた社会を、以下の4つに分類しています。

狩猟社会(Society 1.0)

野生の動植物を狩猟、採集することで生活を支えていた、農耕が始まるまでの原始社会のことです。

農耕社会(Society 2.0)

それまで採集して食糧としてきた穀物などを、植えて育てるという試みによって農耕が始まります。それまでは移動しながら食糧とする動植物を狩猟・採集してきましたが、農耕の始まりによって人々は農耕地を定めて暮らすようになりました。定住地には狩猟社会よりも大きな共同体が生まれ、今日に至る社会基盤の形成が見られるようになります。

工業社会(Society 3.0)

産業革命後の社会を指すことが一般的です。さまざまな技術革新により機械製品などの大量生産が可能となり、農業中心の社会から工業に最適化された社会構造へと変化していきます。

情報社会(Society 4.0)

インターネットの普及やコンピュータの処理能力の向上、携帯電話やスマートフォンなどの情報端末の発展によって、瞬時に世界中のあらゆる情報にアクセスできるようになりました。世界がネットワークでつながっている現代社会を言います。

「Society 5.0」は、「情報社会(Society 4.0)」に続く新たな社会システムであり、日本が提唱する未来社会のあるべき姿(超スマート社会)に向かうための変革の道筋を示すものです。そして「Society 5.0」には、超スマート社会の実現に向けたさまざまな変革を科学技術イノベーションによって先導していくという想いが込められています。

「Society 5.0」で解決したい「Society 4.0」の課題

「Society 4.0」の課題とは

「Society 4.0」の課題
「Society 5.0」で実現する社会/内閣府作成

現在の「情報社会(Society 4.0)」においても、私たちは現実世界からサイバー空間にアクセスして必要な情報や知識を得ることができます。しかしながら、サイバー空間に蓄積された情報や知識を共有し、社会のさまざまな分野で横断的に活用するための連携が十分になされないという問題がありました。

また、必要な情報にたどり着いたとしても、それらを分析し活用するためには、相応の負担と能力が求められます。このほか、年齢や障害などによる労働や行動範囲の制約や、地域ごとに抱える課題や高齢者のニーズに十分な対応ができないといった課題がありました。

「Society 5.0」実現に向けて注目されている技術

現代社会(Society 4.0)が抱えるこのような課題を解決に導くために、「第5期科学技術基本計画」では以下の基盤技術に注目し、その強化を図ることを宣言しています。

サイバー空間における情報の流通・処理・蓄積に関する技術

以下の技術は、超スマート社会サービスプラットフォームに必要となる基盤技術であり、日本が世界に先駆けて超スマート社会を実現し、ビッグデータの収集、解析によって新たな付加価値を生み出すために欠かせない技術です。

  • IoTシステム構築技術:サイバー空間における安全な情報通信を支える技術
  • ビッグデータ解析技術:多種多様で大規模なデータから新たな知識や価値を導き出すための技術
  • AI技術:情報処理・解析能力、学習機能を有し、高度なコミュニケーションを支える技術
  • デバイス技術など:大規模データの高速・リアルタイム処理を実現するデバイス技術や、大容量・高速通信を可能にするネットワーク技術など

新たな価値創出のコアとなる強みを有する技術

日本が強みを持つ技術をシステムに組み込むことで優位性を保ちながら、多様化する社会のニーズに対応した新たな価値創出を実現することができます。

  • ロボット技術:コミュニケーション、福祉・作業支援、ものづくりなど多様な分野での活用に期待
  • センサ技術:人やものから情報を収集
  • バイオテクノロジー:センサ技術やアクチュエータ技術に変革を
  • 素材・ナノテクノロジー:革新的な構造材料や新機能材料などを実現
  • 光・量⼦技術:革新的な計測技術、情報・エネルギー伝達技術、加工技術など

「Society 5.0」で実現したい社会

「Society 5.0」では、現実世界に設置された各種センサが検知する膨大な情報が、サイバー空間に蓄積されていきます。サイバー空間では、これらのビッグデータを人工知能(AI)が解析し、ロボットをはじめとする最先端のデバイスを通じて現実世界にフィードバックされるようになります。このことによって、現代社会(Society 4.0)に生じていた格差の是正やさまざまな制約を解消したうえで、以下のような社会の実現を目指しています。

IoTですべての人とものがつながり新たな価値が生まれる社会

あらゆるものが、インターネットを介して情報をやりとりすることを可能にするのがIoTです。IoTによって、ものは自ら発信し現在の状態を人に知らせたり、取得した情報を必要としている人たちに届けることができるようになります。こうして、すべての人とものがつながることで、これまでに実現できなかった新たな価値やサービスを生み出し、広く提供することができるようになります。

イノベーションによりさまざまなニーズに対応できる社会

「Society 5.0」がもたらすイノベーションによって、新たな価値が創出され、新たなサービスが提供されるようになります。人々は、さまざまな制約から解放され、誰もが、いつでもどこでも、安心して、利便性の高い社会サービスを享受することができるようになります。地域や年齢・性別、言語などによる格差がなくなり、人それぞれの多様なニーズにきめ細かく対応できる社会が到来します。

AIにより、必要な情報が必要な時に提供できる社会

これまでの情報社会(Society 4.0)では、サイバー空間に蓄積された情報に人がアクセスし、これらを解析することで新たな価値を生み出してきました。しかしながら、必要な情報の探索や分析が大きな負担となり、取得した情報を有効に活用するすることができていないのが現状です。「Society 5.0」では、人の能力を上回るAIが膨大な蓄積データ(ビッグデータ)にアクセスし、解析してくれるようになります。そして、必要な情報を必要なタイミングで提供してくれるようになります。さらにAIは、一見すると無秩序に見える蓄積データに何らかの法則性を見出すことも得意なので、それらの解析結果を利用して、新しい知見や解決策を導き出すことも容易になります。

ロボットや自動走行車などの技術で人の可能性がひろがる社会

製造業の工場には、すでに数多くのロボットが導入されていますが、こうしたロボットを制御する技術の進化によって、生産現場は大きな変化をとげていきます。各機器に搭載されたセンサによって集積されたデータを用いて生産状況を管理したり、消費者の需要動向やサプライヤーの在庫状況、配送に関する情報などのデータを解析することで、消費地にタイムリーに製品を届けることができるようになります。また、通信機能を搭載した自動車が、自ら道路状況や事故情報を取得して、渋滞を回避するルートを提案してくれたり、目的地を言葉にするだけで自動運転での移動も可能になります。

「Society 5.0」は技術が支える人間中心の社会

現代社会(Society 4.0)では、経済や組織が優先され、個々の知識やスキルによって、受けられる社会サービスに格差が生じていました。「Society 5.0」では、これまで人間が行っていた作業や調整をAIやロボットが代行・支援するために、煩雑で不得手な作業から解放されます。こうして誰一人取り残すことなく、快適で質の高い生活を提供するのが、「Society 5.0」が目指す人間中心の社会です。

「Society 5.0」は技術が支える人間中心の社会
「Society 5.0」が目指す社会/内閣府作成

現在の日本が抱えている課題は、地球規模で取り組むべき課題であり、国連が提唱するSDGs(Sustainable Development Goals:持続的開発目標)の達成にも通じるものです。そして「Society 5.0」は、AIやロボットに監視・支配される未来ではなく、人間にしか持ちえない感情や発想力、行動力を大切にし、それらを存分に発揮できる世界を目指すものなのです。「Society 5.0」によって導かれる多くのイノベーションによって、新たな価値が次々と創造され、活力に満ちた社会の実現が期待されています。

「Society 5.0」は、けっして遠い未来の夢物語ではありません。その変革は、政府をはじめ多くの自治体・企業によって、着実に動きはじめています。各々が自身の課題と受け止めて本気で取り組むことが、理想とする未来社会の実現への早道ではないでしょうか。

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