2022年1月6日

マイナンバーの次にくるもの:行政制度にもID附番を

新型コロナ禍のもと、マイナンバーカードの導入が進んでいます。岸田政権下のデジタル庁でも引き続き、それが政策の一つの柱です。
マイナンバーカードは、国、自治体におけるDX推進の基盤になることが期待されていますが、同時にやらなければならないことがあると、私は考えています。行政側の行政制度、各種公共サービスにもIDをふることです。これは企業の事例に例えると、わかりやすい。現状のマイナンバーカードの議論は、企業でいう“顧客ID”だけが議論されていて、もう一方の“商品サービスID”については、ほとんど議論されていない状況に他なりません。

行政関連システムを構築する際、現状では、特定の行政制度、手続きを指定する場合には、行政制度の「名前」で各制度を特定する場合が多いです。しかしながら、名前だけでそれぞれの制度を効率的に識別することは容易ではありません。例えば、扱いにくい長い名前の制度や、似たような名前だが実際は異なる制度が、様々に存在しているからです。また行政制度の識別を、行政制度の「名前」で行うことが不十分という点については、マイナンバーの取り組みがそのまま参考になります。マイナンバーでは、住所、性別などの付加情報があったとしても、国民の「名前」ではなく、IDで個々の国民を識別する手段を選んでいます。ちなみに、マイナンバーで問題視されている個人情報に関する検討は、行政サービスIDについては全く必要ありません。

それでは、導入すべき行政サービスのIDはどのような要素を満たすべきか。これもマイナンバーの議論が参考になります。行政サービスIDが備えるべき要素は、まず、行政機関別の取り組みではなく、国、自治体の組織を超えた網羅性を実現する「悉皆性」、そして、法改正も踏まえた運用を実現する「継続性」、さらに省庁間を超えてIDのダブりがないようにする「唯一性」が必要です。
私は、これら全てを満たすためには、マイナンバー導入時の法制化を参考にして、行政サービスID附番についても法制化すべきと考えています。

子育てや高齢者支援、被災者支援など、私たちの暮らしに密着した行政サービス情報を見れば見るほど、国や自治体職員の皆さまが、今まで汗を流して培ってきたきめ細やかな仕組み(コンテンツ)が、すでに様々あることを、私自身は痛感しています。こうした多様な行政サービスにIDを附番して整理し、わかりやすく発信することにより国民が制度を活用し、DXによる利便性を実感する。そこに日本の行政DX推進を加速化するカギがあると、私は考えています。

安井秀行(アスコエパートナーズ)
この記事を書いたのは:

株式会社アスコエパートナーズ 代表取締役社長 NPO団体 アスコエ代表 一般社団法人ユニバーサルメニュー普及協会 理事 慶応義塾大学 政策・メディア研究科 非常勤講師 内閣官房「新戦略推進専門調査会 デジタル・ガバメント分科会」委員 内閣官房「地方官民データ活用推進計画に関する委員会」委員 マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパン、株式会社DBMG取締役を経て、現職。企業だけでなく、行政等公的機関も含めたウェブ、マーケティング戦略関連の幅広いコンサルティングを行っている。

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